イタリア篇 ユニークな小鉄道とサルディーニャ島の秘境鉄道


飾り付けられたNo.1電車 オピチナ車庫にて
Special Car(No.1) for Festival(Tram de Opcina)
at Opicina depot (near Trieste), Italy
'00 Sep.16


イタリアという国は歴史、美術、食などなど観光資源が豊富にあることから、鉄道そのものが観光資源となっている場所は多くありません。
しかし走っている鉄道のユニークさの点では、他のヨーロッパの国のそれと比較して勝るとも劣りません。
ここでは限られた休暇で訪ねることができたイタリア北部のユニークな鉄道と、地中海に浮かぶサルディーニャ島を走るディーゼルカー(サルディーニャ鉄道)を紹介します。

トリエステのトラム Tram de Opcina(TRENOVIA TRIESTE - OPICINA,Transporti Trieste)
スロベニアとの国境に近い町、トリエステ。イタリアにあってイタリアらしくない町という評を聞いたことがありますが、確かにそういう印象です。
国境の町であるためだけでなく歴史的にオーストリアだった時期もあり、また訪ねた日の曇り空がそんな印象を強くした理由かもしれません。
この街に、これもイタリアらしからぬ紺と白の地味な色合いの路面電車が、1路線走っています。
電車は、起点のPiazza Oberdan(オーベルダン広場)を出発すると、ビルの谷間の細い道に入り、そして急坂下の停留所?に停まると・・・
こちらはイタリアらしいオレンジ色の機関車(形は凸形機関車で、加えてケーブルカーのようにケーブルに牽かれる)が電車後部に補機として連結され、推進されて、約800mの急な住宅街の坂を登ります。
(案内所の観光地図には「ラックトラクションシステム」と書いてあるが、ラックレールといえないのでは・・・。)
坂を登りきり機関車が離されると、今度は緑多い山の風景の中を走り抜け、終点のVilla Opicina到着。
わずか5km余りの路線のなかで、これほど変化のある路線は、おそらく珍しいものです。
偶然、訪問した日がOpicina近くのObeliscoでお祭りのがあるとのことで、国旗などでデコレーションされたイタリア最古の現役保存電車(1号車、1902年製)のお蔵出しがされ、撮影することができました。 ラッキー!(^^)v

レノン/リットナー鉄道 Renon Tramvia/Rittner Trambahn
イタリア北部ボルツァーノ(Bolzano)はオーストリア・チロル地方に近い町。言語もイタリア・ドイツ両方が使われており、ドイツ語地名はBozen。
ドロミテ方面の入り口として知られています。(この項、地名等は伊/独で書きます)
国鉄(FS)Bolzano/Bozen駅を出てBrennero/Brennner方向に線路沿いを歩くこと数分の場所に、ロープウエーの駅があります。
標高262mの町からこのロープウエーで一気に標高1220mに上ると、この電車の始発Soprabolzano/Oberbozenの駅です。
線路沿いに歩いていくと、ドロミテアルプスを望みながら牛が草を食む牧場やホテルなどがある高原の牧歌的な風景や林が続き、その中をクラッシックな木造電車が走ってきます。
路線はSoprabolzano/Oberboze−Collalbo/Klobensteinを1時間1本間隔、16分で結ぶ路線と、Soprabolzano/Oberbozen‐L’Assunta/Himmelfahrtを平日のみの1日4本、4分で結ぶ路線の、2路線があります。

トレント-マーレ鉄道(Ferrovia Trento-Male’ FTM)
イタリア北部、トレンティーノ・アルト・アディジェ州の州都、トレント。
といってもどんな町か思い浮かばないのですが、世界史の教科書にある「トレント公会議」という言葉を憶えている方はいるでしょう。
歴史的な城がありますが、それほど大きな町でも、外国人観光客が多く来る町でもありません。
しかし、イタリアにしては派手に観光化していない落ち着いた中小都市で、個人的には気に入った町です。
この町から、1本の私鉄ローカル線電車が出ています。
延長56kmもあるこの鉄道、電車は町を抜けるとりんご畑の続く田園風景を走り、渓谷を鉄橋で渡り・・・と変化に富んだ風景を車窓から眺めつつ、終点のMale'(マーレ)に到着します。マーレは、落ち着いた静かなアルプスの麓の町です。
(追記:2003年に、路線が約10km先のMarillevaまで延伸されました。このため現在、延長66kmとなっています。)

サルディーニャ鉄道(Ferrovie della Sardegna FdS)
イタリア第2の島サルディーニャ島には、幹線のイタリア鉄道(fs)とサルディーニャ鉄道(FdS)が鉄道網をつくっています。
FdSの路線はいずれも非電化で合計8路線、630kmもありますが、そのほとんどが観光用で季節運転または不定期(貸切)運転です。
定期運転されているのは、

(1)島の中心都市カリアリ(Cagliari)からマンダス(Mandas)を経てイシリ(Isili)までの間、82km
(2)島中央部、fsと接続するマコメール(Macomer)とヌオロ(Nuoro)間、63km
(3)fsと接続する島第2の都市サッサリ(Sassari)と観光地アルゲーロ(Alghero)との間、35km
(4)サッサリと北のソールソ(Sorso)間、11km
(5)サッサリと東のヌルビ(Nulvi)間、35km。


これら合計5区間、226kmのみです。
今回は、マンダスから島東部の海岸の町、アルバタックス(Arbatax)を結ぶ季節運転の観光列車(Trenino Verde)に乗ってきました。
FdSのカリアリ駅は町の北東部、Repubblica広場にあり、fsカリアリ駅がある町の中心部からバスで数分、徒歩では30分程の距離。
駅というよりもバスの待合所といった雰囲気の建物で、うっかりすると見落としてしまうかも。
カリアリからマンダスまで朝一番のディーゼルカーに乗って2時間弱。
マンダスで乗り換え、「秘境」ともいうべき人影少ない山岳地帯をディーゼルカーで走ること、さらに約4時間半。
山岳路線らしいカーブでの左右揺れが何とも言えない雰囲気。
不定期に走る蒸気機関車のために、一定距離ごとに石炭小屋が、駅には給水塔があります。
また、途中展望台のような眺望が開けた場所に停車し、景色を楽しむ時間もあります。
車掌さんが、近くに生えているウチワサボテンの実を剥いて食べさせてくれたのですが、実の棘を指に刺してしまったのも思い出。
終点のアルバタックスは、大きなフェリーも発着できる桟橋がある一方、裏手にビーチもある静かな町。
また、もう一つ今回乗る機会のあった、サッサリとアルゲーロを結ぶ路線は観光地に向かう路線でもあり、地元の人も観光客も多い列車です。

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Tram de Opcina(TRENOVIA TRIESTE - OPICINA) '00 Sep.16

オーベルダン広場にて 補機に押され急坂を登る 坂の中間地点にて 緑多い風景を走る 緑多い風景を走る
オベリスコ停留所近くにて 終点、オピチナ駅 特別電車と民族衣装の女性。オピチナ車庫 特別電車 オピチナ車庫 特別電車のお蔵出し。オピチナにて。

Renon Tramvia/Rittner Trambahn '00 Sep.19

木造電車。コラルボにて。 牧場の中を走る木造電車 牧場の中を走る木造電車 牧場の中を走る新型電車 牧場の中を走る木造電車
ドロミテの山をバックに コラルボ駅にて 木造電車車内 ソプラボルツァーノにて コスタロバラ停留所近くにて

Ferrovia Trento-Male’ (FTM) '00 Sep.17

FTMトレント駅にて 車内にて モラーロ駅での列車交換 終点、マーレ駅 終点、マーレ駅

Ferrovie della Sardegna (FdS) '00 Sep.13,14

サルディーニャ鉄道カリアリ駅 朝一番の汽車に乗る 車内にて 列車は一時休憩 ラヌゼイ駅にて
終点、アルバタックス駅にて 中間地点セウイ駅にて。下り機関車列車と交換 セウイ駅にて マンダス駅にて。カリアリに帰る列車に乗り換え アルゲーロ駅。観光客多し